2017/11/07
高齢になるにつれ、さまざな要因により低下するといわれる『QOL』。しかし、高齢者こそ、このQOLの維持・向上が重要といわれています。
そこで今回は、家族や施設スタッフなど周囲の人が覚えておきたい『高齢者のQOLを高めるサポートのポイント』について簡単にご紹介します。
QOL(= Quality of life)の訳は、『生活の質』です。
精神的・社会的に生きがいを感じることができるか、人間らしくイキイキとした暮らしを送れているか等を意味し、広義にとらえれば『人生の質』ということもできます。
QOLは、1970年代アメリカで成立した『リハビリテーション法』に影響するところが大きく、「障害によって失った身体の機能がたとえ回復しなくても社会参加や自己実現は可能だ」
とする考えが基本となっています。
1980年代になるとQOLの定義は医療分野に広く浸透、特に末期がん患者の終末期に寄り添うケアの指標として注目されました。
昨今ではQOLの考えは福祉・介護分野まで広がり、高齢者の生活の質を語るうえで共通言語になっています。
そもそもQOLは特定の層だけでなく、世代を問わずすべての人にかかわる定義・指標です。しかし、高齢期になるとその意味合いは、若年期の何倍も重要になってきます。
人は高齢になると老化とともにさまざまな身体機能が低下しはじめ、医療・介護・福祉分野のサポートが必要になります。
しかも身体の変化だけでなく、自身の退職や子どもたちの自立など、生活環境が大きく変化するのもこの時期。
高齢になるということは、身体能力が衰え、多くの手助けが必要となるだけではなく、心的な不安要素も各段に増えるということなんですね。
具体的には、以下のようなことが挙げられます。
【高齢者の悩みの原因】
●各臓器の機能が低下する
●身体が不自由になる
●病気にかかりやすくなる
●孤独に陥りやすくなる
●金銭面で不安が生じる
●将来を悲観しがちになる
・・・など
高齢者の多くはこれらいずれかの問題(あるいは複数の問題)を抱えているといっても過言ではありません。
特に同居家族がいない場合、相談相手もなく悶々と悩み苦しむ日々が続くと、次第に家に閉じこもりがちになる、人と接することを面倒と感じるようになる、何事に対してもやる気が出ない・・・といった“負のスパイラル”に陥りがちに。
こうなると、QOLは大きく低下し、人間らしいイキイキとした暮らしからは程遠い状態とあるということになります。
高齢者のQOLを向上させるには、家族をはじめ施設スタッフといった周りの人間のサポート・援助が必要不可欠です。
高齢者ごとに状況は異なりますが、それぞれのレベルに寄り添いながら、次の3点を意識した支援を行いましょう。
【前向きな心を育もう】
まずは高齢者自身に前向きな心を取り戻してもらえるよう働きかけましょう。
具体的には・・・
◎楽しみを探してもらう:
クイズ、歌、パズル、ゲーム、読書、映画、何でも構いません。その方が興味を持てるもので、すぐに取り組める簡単なものがいいでしょう。
みんなで楽しめるものだと、周りとのコミュニケーションも生まれ一石二鳥ですね。
◎おしゃべりの相手になる:
いろんな不安から閉じこもりがちになっている方にこそ、話し相手が必要です。悩みを聞き、同調してくれる相手がいるだけで心の負担は軽くなります。
最初は悩み事に関する話が多いかもしれませんが、徐々に本人の好きなこと、好きなものなど話が広がる可能性も。人と接することそのものが、日々の活力になるはずです。
【身体を動かそう】
元気な心は、元気な身体から。
身体レベルに応じて、できる範囲内で身体を動かすことを促しましょう。
例えば・・・
◎日に1度は外に出る:
散歩をする、買い物に行くなど、日に1度は日光にあたり、外の空気を吸ってもらいましょう。外に出ることが高齢者にとって日々の目標、ルーティンワークとなり、生活にリズムが生まれるはずです。
これを続けることで、外出時間が少し増えても平気になる、これまでより少し遠くへ足をのばせるようになる、といったことも期待できます。
◎体操をする:
元気な高齢者の中には体操を日課にしている方が少なくありません。
毎日テレビでやっているような本格的な体操はもちろん、身体の状況によっては、座ったままでできる体操、手の体操、首の体操などもおすすめです。
個人に合わせて、無理なく取り組めるものからスタートしましょう。
◎簡単な筋トレをする:
身体が元気で特に持病もない高齢者の方には、筋トレをおすすめします。
筋肉は歳を追うごとに低下しますが、一方で年齢に関係なく鍛えることができる唯一の器官も筋肉なのです。
高齢者にとって歩行を支える足の筋トレは、特に有効です。
人間の筋肉の中で一番大きい『大腿四頭筋』を鍛えることで、歩く力を大きく改善することが期待できます。
※高齢者における筋トレの重要性については、コラム『高齢者の筋トレで意識したい3つのポイント』でご紹介しています。ぜひご覧ください。
【周囲・社会と交わろう】
少しずつ元気を取り戻してくれた高齢者には、世界を広げてあげるようなサポートが必要です。
◎友達づくりをサポートする:
歳をとると友達づくりはいっそう難しくなります。
特に、男性は自分から気軽に声をかけ、新たな輪に加わるのが難しいようです。
そういう場合、周囲の人間や施設スタッフが“橋渡し役”となれば理想ですね。
特に施設など多くの高齢者が会する場では、皆さんの共通の趣味や関心事も把握しやすいはずです。少しのサポートで新たなつながりが生まれれば、こんなうれしいことはありません。
◎地域の集いやボランティアへの参加を促す:
人の役に立つことは、生きがいにも直結します。
現役時代にはなかなか参加できなかった地域活動も、本人が興味を示すようなら積極的に参加してもらうよう周囲が後押ししてあげましょう。
活動を通じて地域の人々と触れ合うことは本人の喜びや生きがいに通じるだけでなく、いざというときの大切なネットワークづくりにもつながります。
遠くの親戚より、近くの他人。
核家族化が進む日本では、これが現実です。
いざというとき駆けつけてくれる、駆けつけてあげるご近所さんがいることは、日々の暮らしの安心につながります。
ここで改めて・・・
●前向きな心を育む
●身体を動かす
●周囲・社会と交わる
高齢者のQOL向上に向けて、家族や身近に接している施設スタッフはこの3点を改めて意識していただければと思います。
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記事執筆:江崎 健太郎
代替医療・予防医療機器の販売メーカー、江崎器械株式会社 代表取締役
2019年より、WCEM(WORLD CONFERENCE ON EXERCISE MEDICINE:世界運動療法学会)外部委員を務める。
EXERCISE & AGEING分野のスピーカーとして講演を行なう。
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