2017/11/08

どう保つ?高齢者のトレーニングに対する“モチベーション”
その他


「トレーニングが長続きしない・・・」よく聞く話ですね。
若い人にも当てはまりますが、こと高齢者になればその傾向はより強く、中には「トイレに立つのも面倒くさい」という方もおられます。

体力の衰えとともにモチベーションも下がりやすい。
それが高齢者の特徴であることを知り、本人の“やる気”を引き出すことが先決です。

今回は、高齢者のトレーニングを成功に導くため『モチベーションUP』の考え方についてご紹介します。                                        

トレーニングは元来、長続きしないもの

そもそも、なぜトレーニングは長続きしないのでしょうか?

ハーバード大学の進化生物学者 Daniel Lieberman氏はこう説明します。
「食料不足の社会では意味なくジョギングすることはない。食べ物を得るために走る、天敵に襲われて逃げるなど、ただ必要に迫られて運動していただけだ」と。
食料が不足した社会において、無駄に動き回るのは余分なエネルギーの消費になります。「必然性がなければ動かない」。これはごく当たり前のことなのです。

現代において、外敵に襲われる可能性はほぼありませんし、食料は満ち溢れ、インターネットの浸透により店に出向くことなく必要なものを常に購入できます。

世の中の変化が、自然と私たちを運動から遠ざけているともいえるのです。

やる気の鍵は『遠慮近憂』?

しかし、便利になりすぎた世の中を理由に運動しなくてもいいのかというと、答えは当然NO。

特に、普通に生活しているだけで徐々に筋力が低下していく高齢者にとって、継続的なトレーニングを行うことは自立した日常生活の維持に欠かせません。
実際、トレーニングや運動の継続が、高齢者の生活の質・身体活動の改善に役立つことは厚生労働省の調査でも公表されています。


ちなみに、人間が自らの意志でトレーニングできるのは、未来を考えて行動できるからです。

孔子の言葉に「遠慮近憂」とあります。
“遠きを慮る”とは単に時間軸だけでなく、空間軸も含めてできるだけ広く、遠くを想うことが大事、だという意味です。

運動における“遠くを慮る”とは一体どういうことでしょう?

例えば・・・
「運動をすることで自立した生活を継続できる」
  ↓
「自立した生活を送れることで、子や孫の手を煩わせない」
  ↓
「結果、医療費を減らすことができる」
  ↓
「これにより、国の医療費削減につながる」

そんなところでしょうか。


しかし、今この一瞬を生きている私たちにとって、先のことを考え今の苦しみに耐えるのは非常に難しいことです。
特に高齢者は「どうせ老い先短いし」「今さらこの歳で運動なんてしたくない」など、後ろ向きの発言をする方が少なくありません。

とはいえ、健康寿命を延ばすために運動はとても重要です。
まずは、このことを高齢者自身がしっかりと理解すること。さらに「自分のため、家族のため、そしてわが国の未来のため」と“遠きを慮る”精神を持てることが理想ですね。

高齢者の“モチベーションUP”につながる取り組み

では、具体的にどうすれば高齢者の皆さんのやる気を引き出せるのか。
周囲の人々にぜひ実践してもらいたいポイントをご紹介します。


●具体的な “夢見る未来”をイメージさせる
トレーニングを継続するために重要なことは『目的』と『目標』を立てることです。

例えば・・・

目的:
健康寿命を伸ばし、日々を健やかに過ごし、自分の足で歩き、自立した生活を送る

この『目的』を繰り返し高齢者へ説明することで、運動を続ける動機付けをしましょう。目的設定ではより遠くの未来をイメージさせることが重要になります。

『目標』は、その目的を達来するための道標です。
例えば・・・

目標:
・孫と遊園地に行きたい
・孫とバージンロードを歩きたい
・家族と旅行に行きたい
・昔の友人に会いに行きたい    など

このような具体的な目標を立て、それを達成するために今どうあるべきか?その目的の達成において、今どのあたりにいるのか? そういったことを高齢者ご本人、ご家族、施設スタッフの間でしっかりと話し合うことが重要です。
夢見る未来のイメージだけでなく、それを実現させるための具体的なプロセスまで提示することで、本人のやる気が刺激されるはずです。


●ポジティブワードで“褒める”を意識する
「褒めて伸ばす」
子どもの教育観点では賛否両論ある説ですが、運動機能の回復においては有効といえます。

生理学研究所は2015年10月、「脊髄損傷したサルの運動機能回復の早期において、やる気や頑張りを司る脳の領域『側坐核(そくざかく)』が、運動機能を司る『大脳皮質運動野』の活動を活性化し運動機能の回復を支えることを脳科学的に明らかにした」と発表しました。

『側坐核』はポジティブなキーワードに反応し活性化されるといわれており、逆にネガティブなキーワードに反応する部分は『扁桃体(へんとうたい)』と呼ばれ、慢性疼痛やうつ病に深く関連があることも最新の脳科学で明らかになっています。

このことからもわかるように、高齢者のトレーニングにおいても“ポジティブワード”は有効な鍵に。施設スタッフやトレーナーが意識的にネガティブワードをポジティブワードに言い換えることが重要なのです。

例えば、「今日は5回しかできなかったね」ではなく、「今日は5回できたね!」と前向きにとらえるように促しましょう。
励ましの言葉は「今のフォーム、すごくきれいでしたよ」や「姿勢がすごく良くなってきましたね」など。些細な変化も言葉にしてキチンと伝えることが、トレーニング継続のモチベーションへとつながります。


●知行合一。自ら率先して動こう
知行合一。知識と行為は一体である、ですね。
高齢者に運動・トレーニングを指導する立場の施設スタッフの皆さんが自ら実践することは、とても重要です。

水泳ができない人が「本で読んだから」と誰かに泳ぎ方を教えたとして、その話を聞くになるでしょうか。きっとなりませんね。

高齢者の皆さんに「運動は素晴らしい」「運動をしないと寝たきりになりますよ」と話すのであれば、自ら動いて手本となってみる。これを心掛けてください。

高齢者のモチベーションアップを図るポイント、お分かりいただけましたか?
「皆さん、トレーニングが続かないなぁ」と感じたら、まずは上記3つのポイントがまずできているかをチェックし、一つずつ意識して取り組んでみてください。






江崎健太郎の画像

記事執筆:江崎 健太郎

代替医療・予防医療機器の販売メーカー、江崎器械株式会社 代表取締役
2019年より、WCEM(WORLD CONFERENCE ON EXERCISE MEDICINE:世界運動療法学会)外部委員を務める。
EXERCISE & AGEING分野のスピーカーとして講演を行なう。

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